アレルギーのある犬が増加中
最近の犬の傾向として、アレルギーを持つ犬が増えています。昔の犬より多い、といわれがちではあります。現在では犬の主な入手先がペットショップになっていることで、人為交配された犬が増えていることは影響していると思われます。
飼い主のいない、いわゆる野良犬は減少傾向にあり、犬同士自然交配した結果、生まれた子犬を飼うということは減っています。(自然交配した方がアレルギーを持つ犬が生まれにくい、ということではないのですが)
また、飼い主さんの環境の方も、小型犬だけでなく、中型·大型犬も室内で飼う傾向が増えています。飼い主さんの目が犬により届くようになったことも大きいと思われます。アレルギーがあるからにはアレルギーの原因となるアレルゲンを除去するのが一番良いことなのですが、それが毎日の食事、命をささえる「ごはん」に関わるとなると問題になります。
実際、食物アレルギーを持つ犬も増えていて、療法食のドッグフードもいくつかあります。今ではペットもアレルゲンの検査ができますので、アレルギーの可能性が疑われる場合、検査をしてみることをオススメします。
食物アレルギーの症状としては、食事の後に吐く·下痢をする、目の縁や唇、足の指の間などが赤くなったり、ブツブツができる、くしゃみ又は咳が酷くなる(重症の場合はゼーゼー言う呼吸音になる)などがあります。なかなか治りにくい症状がある場合、実はそれがアレルギーだったということもありますので、こまめに病院に行くなど、チェックしてあげるといいでしょう。
アレルギーになりにくい食事とは
アレルギー発症には、俗に「アレルギーコップ」と呼ばれる考え方があります。「身体の中にアレルゲンを貯めるコップがあり、そのコップからアレルゲンが溢れたときに、アレルギーを発症する」アレルギー対応のドッグフードもこの考え方に基づいたものがあります。そこでオススメされる食材がベニソン(鹿肉)です。
現在ではベニソンを常食する犬は多くはありませんので、アレルギーのコップの中身は少ないであろうと考えられています。ベニソンを使ったドッグフードは外国産のものが多いです。最近では、鹿の生息数が増えてきたため、国内でもジビエ(野生の鳥·獣肉)の静かなブームがあります。その流れで、ジビエをドッグフードやキャットフードに加工·販売しているケースもあります。
ベニソンの他には、カンガルーミートもよくオススメされます。日本の犬がカンガルーミートを食べる機会はまずないからです。カンガルーは生のフローズンフードやレトルト、ジャーキーなどの形で販売されることが多いようです。我々、日本人の主食である米も、アレルギーを起こしにくいとされています。白米よりは玄米が使用されているフードが多いようです。
人間でも米アレルギーの方がごく稀におられますので、あまり過信しない方がいいかとは思います。米を推奨すると、意外と猫まんまが健康的という結果になりますが…猫まんま(白米に味噌汁またはかつお節をかける)は塩分の多さが問題で、現在では犬や猫には与えられませんが、塩分を少なめに、タンパク質や野菜を増やしてアレンジすることにより、手作りのアレルギー食としての未来があるかもしれません。
獣医学·フードメーカー的には、ポテト·タピオカ·カペリン(ししゃも)がアレルギーを起こしにくい素材とされているそうです。療法食のアレルギー対応フードには、これらの素材が使われていることが多いです。手作りのアレルギー用ドッグフードを作られる方は、炭水化物はタピオカ、タンパク質はカペリンを使われてもいいと思います。
カペリンは塩分が多くなりますので、犬に使う場合は生の物に火を通した方が無難だと思います。ししゃもの干物はあまりオススメできません。(どうしても使う場合は、湯通しするなど、塩分を減らす対策をした方がいいと思います)カペリンは丸ごと食べられますので、骨を食べる分、若干リンが多めになりますので、注意して下さい。
ポテトを大好きなワンちゃんは多いのですが、犬によってはお腹に合わない場合もあるようです。少量から与えてみて下さいね。逆にアレルゲンになりやすい食品の代表は小麦です。卵や牛肉·豚肉、トウモロコシのアレルギーもあるようです。プレミアムフードの中には、アレルギー対応食でなくても、小麦の代わりにバーレイ(大麦)、オーツなどを使っているものがあります。
また、グレインフリー(穀物不使用)のものもありますので、小麦などの穀物由来のアレルギーが発覚した場合、これらのドッグフードを試してみてもいいかもしれません。もちろん、手作り食の場合は、アレルゲンを除去した材料で日々の愛犬のごはんを作ることが可能です。
アレルギーの検査について
アレルギーには種類があり、身体の内側に食物を取り込んで発症するものは「食物アレルギー」です。身体の外に原因があって発症するものは「環境アレルギー」と呼ばれ、ハウスダスト·ダニ·花粉などが原因物質になります。現在、動物病院でよく行われている検査は食物アレルギーに対するもので、「除去食試験」と呼ばれているものです。
食物アレルギーがあるかもしれない、という疑いが出た場合、普段の食餌をやめ、アレルギー対応食に変えてみます。アレルギー対応食を食べて調子が良くなるようなら、元の食餌に戻します。体調が悪くなるようなら、元の食餌にアレルゲンが含まれるのであろうというもので、一種のトライアンドエラー試験といえます。
除去食試験も欠点があり、多頭飼いの場合、対象の犬に除去食だけを食べさせるには、ケージに入れるか部屋分けをする必要があります。除去食が問題ないと分かっても、他にアレルゲンがあるかどうかは調べることはできませんし、環境アレルギーを調べることはできません。人間のように採血をしてアレルギーの検査をすることもできます。
この検査では環境アレルギーも食物アレルギーも調べることができます。ですが、実際よりアレルギーに反応する原因物質がが多く出るということで、この検査を嫌う獣医さんもいるようです。民間のアレルギー検査は毛や唾液などを検体とすることが多いようです。こちらも環境アレルギーも食物アレルギーも検査することができます。
医療行為をせずに検体を採取する必要があるからだと思われます。民間の検査機関の精度に関しては、ハッキリしません。現在の段階では、いくつかの検査の結果を比較した方が精度が高くなると思われます。気になる費用の方は一般的な食物アレルギーだけで2,3万円から始まるようです。血液検査や民間の検査は、検査項目が増えれば費用が上がります。事前にご確認していただく方がよいでしょう。
アレルギーがあっても楽しいごはんタイム
昨今のペットブームもあり、全国に自然派で上質なペットライフを提唱しているショップさんがたくさんあります。そのようなショップさんでは犬や猫のアレルギーに対応した食材を販売していることも多いです。手作りするのはちょっと大変、敷居が高い…と思われている方にも、フリーズドライ·レトルトなどの補助食品があったり、既存の食事や素材に「ちょい足し」して、総合栄養食と差がない「ごはん」を作ることもできます。
手作りのドッグフードを販売されているショップさんもあります。自然派、無添加などのキーワードで検索してみると、インターネットにたくさんのショップがあることが分かります。手作り食を推奨している獣医さんもおられて、手作りごはんのレシピを公開されていたりします。手作り食のいいところは、特定できているアレルゲンを除去できることですが、保存しづらいのと、栄養に偏りが出やすいのが欠点です。
また、飼い主さんが一生懸命になりすぎると、犬にも精神的な影響が出てきます。アレルギーはアレルゲンが無ければ反応しないという機械的な側面もありますが、ストレスで悪化するなどのメンタルに左右される部分もあります。食物アレルギーに対応するのは大変なことが多いですが、新しい食材にチャレンジするなど、日々の「たのしい」を積み重ねて、愛犬との「ごはん」ライフを楽しく過ごしていただくことを願っています。